■知事の「新幹線新駅」発言をなぜ問題にするのか(2012年9月14日)
 
 嘉田知事が8月6日、中部圏知事会議で「リニア中央新幹線が開業したら、県内に東海道新幹線の新駅が必要」という趣旨の発言をおこない、県民の怒りと驚きの声が上がっています。関係する自治体の市長からも、「事前の話もない」と怒りの声があがり、知事は弁明と釈明に追われています。
 
 知事は6年前の知事選で、県民の大きな運動と世論のわき上がりをみて、「無駄な栗東新駅は見直す」と公約し、その後、県民の世論を背景に新駅計画を中止させてきました。知事の「リニア後の新駅」発言は、知事の公約と県政運営に反することはもちろん、無謀なリニア計画を、不動の前提として認めているという重大な問題が含まれています。また、知事の新幹線新駅を求める発言は、たまたまマスコミが報じた「リニア後の新駅」だけではないことも問題です。
 
 リニア計画については、すでに今年5月、日本共産党の志位和夫委員長が南アルプス市で、計画には国民的、社会的な要請はなく、急ぐべきは東日本大震災の交通基盤の回復、在来線、新幹線の安全対策であると反対する政策を発表しています。
 
 リニア計画は、建設費9兆円を投じる巨大プロジェクトで、東京−大阪間を時速500キロ、1時間で突っ走ろうという計画です。しかし運行時間を1時間半ていど短縮するために、巨額の投資を求める国民の声や社会的な要請はありません。東海道新幹線の輸送人員はこの20年間ほぼ横ばいであり、日本は人口減少期を迎えています。
 
 リニア計画自身も無謀で、全線ほとんどがトンネルで、運転手は乗車せず遠隔操作で、南海トラフ巨大地震が直撃する地域を走るものです。工事そのものも、日本列島の巨大な破砕帯を通過する難工事が予想されるほか、リニアの電力消費は従来の新幹線よりもJR東海の計画で3倍、さらに5倍という指摘もあり、そのために原発が3から5基必要だという指摘も出されています。原発ゼロ、省エネ社会の建設にも逆行するものです。
 
 強力な磁場にさらされる乗客などの安全性についても不安があり、約30年にもなる建設期間の間に、JR東海の運営する在来線や新幹線の安全対策やサービスへの影響は避けられず、もし計画が破たんすれば、国民に大きなつけ回しがくることも必至です。
 
 リニア計画は滋賀県への影響も避けることはできません。かりに大阪までリニアが開業すれば、東海道新幹線の乗客の78%がリニアに移行し、東海道新幹線は22%という試算を滋賀県自身が示しています。県は、乗客予測ではないと弁明しますが、これは東海道新幹線の存続そのものを危うくする数字だといわなければなりません。嘉田知事は、「リニア開業で東海道新幹線はローカル的役割を担うことになる」と発言の趣旨を説明していますが、リニアそのものが、新駅の根本も危うくし、滋賀県民はかえって不便になりかねないものです。
 
 嘉田知事はリニアそのものでも、「滋賀県に中間駅を」と述べています。リニアは滋賀県を通らず、東京から名古屋ー奈良ー大阪とつなぐ計画です。ところが京都府市は、「奈良ルートより経済効果が大きい京都駅を通るルート」を求めています。今年3月の関西広域連合で、大阪市の橋下徹市長と嘉田知事はこの「京都駅ルート」に賛成し、そうなれば滋賀県内のリニア「中間駅」の可能性も出てくることに期待を表明したのです。橋下市長は「(広域連合に)奈良県がいないうちにどんどん話を進めていいのでは」と述べています。しかしリニアは、大都市間を結ぶ高速輸送システムであることから、「中間駅」はもっぱら列車の待避施設であり、「京都駅」も危ぶまれ、滋賀県民にはかえって不便になるのです。
 
 リニアだけでなく、整備新幹線・北陸新幹線についても、滋賀県は6月28日付の嘉田知事名の国土交通省鉄道局長あて文書で、フリーゲージトレインの導入に同意するとともに、北陸新幹線が県内を通る場合、「北陸3県と同水準の停車駅数及び停車本数を確保すること」を条件にあげています。県内に複数駅を要求したのと同じことです。整備新幹線について、民主党政権は北海道、北陸、九州の3区間の着工にゴーサインを出しました。消費税大増税法案が衆院で強行可決されたわずか3日後のことであり、民自公の消費税大増税と大型公共事業抱き合わせの密室談合を象徴的に示すものです。
 
 北陸新幹線は8月、金沢−敦賀区間の起工式を行いました。建設費は1兆1600億円、費用対効果はわずか1・1という低さで、国民の税金を投じる公共事業として許されない無駄遣いです。ほんらい敦賀までで「慨成」(ほぼ完了)の予定を、大阪まで延ばす計画に民主党政権は了承を与えたのです。
 
 その「敦賀以西」のルートでは、小浜ルート、米原ルート、湖西ルートがあげられています。ところが今年2月に再選された門川大作・京都市長は、北陸新幹線の「京都駅誘致」を公約して、ここから「米原」「湖西」ルートが浮上してきたといわれます。今年3月、関西広域連合は「北陸新幹線(敦賀以西)ルート提案に関わる基本方針」で、「平成24年度末を目指して、全構成員の同意をもって、広域連合としてのルート提案に向けた結論を出す」と決めています。
 
 この整備新幹線は、建設費の3分の2を国、3分の1を地元府県と市町村が負担することとなっています。京都府が建設費について試算し、「米原」3309億円、「湖西」6768億円、「小浜」9229億円としています。とんでもない巨額の負担がやってくることになります。しかも並行する在来線は、JRから地元自治体に運営が押しつけらます。米原ルートであれば北陸線、場合によっては琵琶湖線も、湖西ルートであれば湖西線が対象になりかねません。
 
 当面はフリーゲージトレインで在来の路線を走り、建設費を低減するということも考え方としては可能ですが、その場合も、在来線の特急が廃止されるのをはじめ、通勤、通学のダイヤは大幅に不便になるでしょう。しかし、関西財界はいずれにしてもフル規格で「敦賀以西」の新幹線をと要求しており、関西広域連合は「フル規格」を求めることを基本方針に盛り込んでいます。嘉田知事はこれに賛成した上で、新駅を国に求めているのです。
 
 嘉田知事は、リニアや整備新幹線の県内駅建設にいずれも賛成してきました。どれも滋賀県内から発想された計画ではないということが、きわだった特徴です。「東海道新幹線新駅」が、多くの県民に、寝耳に水と受けとめられているのは、そのことの何よりも雄弁な特徴です。
 
 これらの計画は、「コンクリートから人へ」の公約を踏みにじり、財界言いなりの民主党、自民党、公明党の大型公共事業推進の国政のあり方にあることは明白です。日本共産党は、リニアや整備新幹線に反対し、計画の根本にある財界優先の政治を変えるために、県民、国民とともに奮闘するものです。