■原子力規制委員会が高浜原発再稼働容認の「審査書案」を承認(2014年12月17日)

 原子力規制委員会が高浜原発の再稼働を容認する「審査書案」を了承したことに、日本共産党滋賀県委員会は、その「審議書案」がまったくの「再稼働ありき」の結論にそってつくられたものであり、原発の危険にさらされる住民を置き去りにしたものであること、高浜原発の再稼働はそれに続く全国の危険な原発の再稼働に道を開くとともに、高浜原発そのものがとくに危険な原発であることを見ていないことに、きびしく抗議します。全国の原発再稼働を許さない運動で頑張っておられるみなさん、原発の再稼働に不安と危険を感じておられる圧倒的多くのみなさんとともに、全力で再稼働阻止、原発ゼロをめざしていっそう奮闘します。安倍暴走政治は絶対に許しません。
高浜原発 再稼働ありき 事故対策・避難計画なしでも「適合」

 ○ 原子力規制委員会は17日、関西電力が2013年7月から今年12月1日までにかけて提出されていた高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、原子炉設置変更許可申請書と申請書補正書について審査し、「適合しているものと認められる」とする「審査書案」を了承しました。

 ○ 審査書案の了承は7月の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)に続く2件目となりました。

 ○ 「審査書案」は、高浜原発の再稼働の前提となるもので、マスコミで「合格証が出た」と報じているように、事実上、高浜原発の再稼働を承認したものとなります。もともと原子力規制委員会は、田中俊一委員長自身が「新規制基準に適合したからといって、安全性を判断したものではない」と、繰り返し述べているように、原発の「再稼働ありき」の結論を出すための手続きに過ぎません。

 ○ この間に福井原発群については、大飯原発の再稼働を差し止めた福井地裁判決(204年5月21日)、差止までには至らないとしたものの、「(規制委員会などが)新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとはとうてい考え難く」とした大津地裁での仮処分決定(2014年11月27日)が出されています。いずれも、関西電力は原発の危険性を指摘されて、まったく反論できず、敗訴、事実上の敗訴となったものです。しかし、審査書には全く反映されませんでした。

 ○ 今後の手続きは、今月18日から2015年1月16日まで30日間、意見募集をおこない、原子力委員会、経済産業大臣の意見を聞いたあと、原子炉等規制法にもとづく許可を行うとしています。しかし、この意見とは、「科学的、技術的なものに限定される」もので、川内原発の審査書案へ多くの意見が出されたものの、ほとんどが議論の対象にもされていません。

 ○ 審査書は、高浜原発で考慮すべき最大の地震動は700ガル、敷地内での最高津波高さは6・7メートルとしています。また、過酷事故(シビアアクシデント)が起きた場合、最短19分で炉心が溶融し、1・5時間後に原子炉圧力容器が破損するとしています。環境中に放出されるセシウム137は4兆2000ベクレルと試算しています。

 ○ ところが、今回の高浜原発3、4号機の審査は、同じ敷地内の1、2号機の炉心に核燃料が装てんされていないことを前提にしています。事故時の緊急対応拠点としての免震事務棟は建設中で、その間は1、2号機の建屋が緊急時対策所になるためで、安全の確保はまったく、らち外にされています。

 ○ 関西電力は、その1、2号機についても、再稼働する計画です。1,2号機はすでに約40年間稼働してきました。長期間の稼働は原子炉そのものがぜい弱化することを意味しています。原子炉等規制法でも稼働期間を40年としています。しかし同法は、稼働期間の延長を最大20年認めるよう改悪されました。これをねらって、関電は1、2号機も再稼働させることをねらって特別点検を実施しています。

 ○ この問題は、1,2号機で再稼働が強行されても、3,4号機との同時稼働であれば、再度の審査が必要になるということです。

 ○ 高浜原発3、4号機は、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を用いる「プルサーマル発電」を前提にしています。プルトニウムはウランよりもさらに危険度の高い核物質です。プルサーマル運転は、原子炉の制御がききにくいなどの問題点も指摘されています。運転そのものがウラン燃料原子炉よりもいっそう危険です。

 ○ 審査書案は、放射能が漏れることを前提としています。しかし住民の避難計画は、審査の対象外にされました。重大な課題は置き去りにしているのです。このような原子炉の再稼働を許すのかどうかがするどく問われることとなります。

 ○ 高浜原発では、隣接する京都府舞鶴市と、滋賀県高島市の一部が、住民の避難が義務付けられている30キロ圏内に含まれています。それなのに、この隣接自治体には、立地自治体と同等に再稼働について同意するかどうかの権限は与えられていません。このことは滋賀、京都の両府県知事とも、「再稼働する環境はそろっていない」と主張しています。これを無視した再稼働は許されません。

 ○ 過酷事故が起きた場合、住民の避難体制は、各地方自治体が決定すると義務付けされています。しかしその体制はまったく不備のままです。しかもその不備を補おうという国の姿勢はまったくみられません。国会審議でも政府は、「避難体制は地方自治体が決定するものだ」と突き放した答弁しかしていません。

 ○ 審査は、工事計画、保安規定の認可も必要です。また、運転前には使用前点検が行われます。審査書案は、再稼働への「合格証」とはいえません。これからの住民運動と、日本共産党が躍進した国会での審議も大きく影響してきます。

 ○ 福井原発群の再稼働差止を求める住民訴訟の辻義則団長は、「総選挙が終わったタイミングを狙ったかのような原発再稼働を進める動きに怒りを覚える。大津地裁は申請を却下したものの、この決定に照らしても、安全が確保されないまま、再稼働を急ぐことは許されない。裁判所が想定していた事態ではなくなったことから、再稼働ストップの新たな仮処分申請も起こしたい」と話しています。