■関電の高浜原発再稼働に向けた補正申請提出に抗議し、再稼働容認の動きに反対します(2014年10月31日)

 関西電力は31日、高浜原子力発電所3、4号機(福井県)の安全対策を盛り込んだ補正申請書を原子力規制委員会に提出しました。国民の圧倒的多数が反対し、「地震の巣」と言われるような危険な浜岡原発の再稼働へ突き進む関西電力と、これを安全が確保されたというお墨付きを与えようとしている原子力規制委員会にきびしく抗議し、原発はただちにゼロとするよう強く求めます。



 関西電力は、高浜原発3、4号機の再稼働申請の補正書を提出し、マスコミは九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県)に続く、「合格第2号」だと報じています。

 しかし、東京電力福島第一原発の事故は、いまだに収束はおろか、事故原因すら究明されていず、環境への放射能漏れは拡大の一途です。被災住民の生業とくらしはめども立っていません。このようななかで、補正申請で再稼働を求めるのはあまりにも無責任というべきです。またこれを「合格」とするようなことは絶対に許すわけにはいきません。

 原発は、事故があれば手の着けようがなく、事故がなくても危険で、安全な処理法すらない使用済み核燃料が増え続ける、人類と共存できないものです。安倍政権の、原発を「ベースロード電源」と位置づける、破たんした原発依存の推進は撤回するほかありません。

 高浜原発は、全国で最も原発の比率が高い関西電力の中で、大飯原発に続き発電量の大きな原発で、総発電量の約20%を占めています。大飯原発3、4号機の再稼働に先行して、この高浜原発の再稼働を再申請した関西電力は、安全よりも企業の利益優先ときびしく抗議します。

 関西電力は、大飯原発の原子炉直下の活断層の存在すら認めず、対策を渋ってきました。高浜原発も連動する3つの活断層が集中する「地震の巣」の上に建設されています。そのために関電は、7700ページにも及ぶ補正申請書をつくり、地震の強さ想定値を、昨年の申請当初の550ガルから700ガルに引き上げ、配管などの耐震補強を施すほか、想定する津波の高さも従来の2・66メートルから6・77メートルに上げ、浸水を防ぐために8メートルの防潮堤を建設することなども想定し、海水ポンプを飛来物から守る設備などもつくるとしています。

 ところが、これらの追加工事の詳細設計を記した「工事計画」などの書類を規制委員会に提出しなければいけないにもかかわらず、関電は「地震想定の引き上げに伴う耐震評価などがまだ終わっていない」として、現時点で「提出時期は未定」だとしています。防潮堤工事などは、マスコミ向けに「年明け早々の完成を目指す」といいながら、時期を問われると「未定だ」と言わざるを得ない状況です。

 いっぽう審査する側の、規制委員会の田中俊一委員長は、「再提出は合格と言っていいということだ」という趣旨を、繰り返し公言してきました。これが「高浜原発は川内原発に続く審査合格第2号となる」というマスコミが報道のもとになっています。このような無責任な対応は許されるべきではありません。

 規制委員会は高浜原発の安全を確信できる仕事をやり尽くしたのかと言えば、そうではありません。

 今年3月の参院委員会で、田中規制委員会委員長は、日本共産党の倉林明子委員の質問に、「新規制基準に適合したとしても、それが絶対に安全であるということを意味しているわけではありません。・・・事業者がそのつもりになってまた安全確保についての姿勢を貫くことが極めて大事だということを申し上げておる」と述べました。

 これは原発という巨大な技術に向き合うことへの真摯な態度を示したのでしょうか。それとも、安全はだれも保障することができない、再申請書が出てくればそれを確認するだけでいいのだという、開き直りでしょうか。

 もともと安倍内閣が原発を再稼働させるためにまとめた原発「新規制基準案」には、各原発の地震・津波想定に関する具体的数値が定められていません。 「合格」ありきの「見切り発車」といわざるをえません。

 関西電力は、大飯原発の活断層の可能性をいまだに認めておらず、安全対策に取り組む姿勢が根本的に欠けています。高浜原発3、4号機の再稼働の再申請など絶対にできないものです。

 関電は、大飯原発3、4号機についてもあきらめたわけではありません。関電は、「高浜だけでは赤字を解消するには至らないので、大飯原発の稼働を急ぐ」「何とか今年度中に高浜を再稼働させたい考えで、川内原発の審査合格が決まった10日、関電の森詳介会長も『高浜の審査を進めてほしい』と規制委に注文をつけることを忘れなかった」とも報じられており、連続して再稼働へ突き進む考えです。

 関電は、高浜、大飯の原発とも、再稼働ではプルサーマル発電を前提としています。すでにそのためのMOX燃料が高浜原発3、4号機に搬入されています。

 プルサーマル発電は、すでに高浜原発3号機では2010年に実施されました。続いて4号機でも実施しようとしたときに、福島第一原発事故(福島第一原発3号機はプルサーマル運転でした)が起きて、「見送った」経過があります。

 プルサーマルは、関電が、福島事故の推移を見なければ決断できなかったほど危険なものです。もともと高浜原発のような軽水炉でプルサーマルは無理があるというのを承知で動かそうというのです。

 プルサーマル燃料は、使用済み核燃料に含まれるプルトニウムを分離し、通常のウラン燃料に混入させてふたたび核燃料に使い、さらに多くのプルトニウムを得ようという、大企業にとっては「夢の技術」です。しかしこうして作られるMOX燃料は、国内では生産できず、外国で処理して日本に運び込まなければならないうえ、原発の燃料としては、中性子のコントロールが難しく、使用済みのMOX燃料は、ウラン燃料よりも格段に危険度が高く、処理はさらに困難です。

 高浜原発の1号機は今年3月に営業運転から40年を経過しました。来年11月には2号機も40年となります。原子炉等規制法では、原発の稼働は「原則40年」とされており、20年の延長が可能という抜け穴がつくられているとはいえ、老朽原発として廃炉の判断を迫られています。

 高浜原発3、4号機も、すでに29年を経過しています。高浜原発のような加圧水型の原発の格納容器は、耐久年数30年を目標に設計されたことは、さまざまな学者や技術者が証言していることです。国民にとって、危険はほとんど同じです。

 原発から30キロ圏は住民の避難計画が義務付けられています。高浜原発の30キロ圏には、滋賀県高島市の一部がふくまれます。福井県や京都府の計13万8000人の避難計画が国によって義務付けられました。しかしそのような避難体制はできていません。 支援すべき政府は、「地方自治体がつくった計画だから政府は責任を負えない」という態度です。

 福島原発事故では、原発の風下への避難というあやまった避難誘導が行われました。失敗を繰り返さないためには、避難計画をつくる正確な情報が公開されなければなりません。しかし、地方自治体には情報も降りてこない、滋賀県のように避難計画を立てても必要なバスの台数すら確保できないというのが現状です。

 しかも影響が30キロ圏に限定される保障など、どこにもありません。そもそも福島原発事故による被害は30キロ圏にとどまらず広がりました。滋賀県が独自に放射線の影響をシュミレーションして、高島市、長浜市の隣接市はおろか、滋賀県全域を覆い、三重県を超え、太平洋にまで及びました。ことし5月、大飯原発の再稼働を差し止めた福井地方裁判所は、原発から250キロ圏の住民に原告としての資格を認めました。

 安倍首相がいっていた「世界最高水準の安全基準で、安全が確認された原発は再稼働する」という方針など、根底から破たんしているというほかありません。そして、安倍首相自身も、厳しい批判におされて、原発に「絶対安全はない」ということを認めざるを得なくなっています。

 高浜に先行する鹿児島県の川内原発、高浜原発も、再稼働に反対する大きな不安と、きびしく反対する運動が全国に広がっています。企業が儲かりさえすればいいという関電、安全の保障などできるわけがないと開き直る規制委員会の「合格証」など、絶対に認めるわけにはいきません。