■大飯原発再稼働の差し止めを命じた福井地裁判決について、弁護団と原告団の声明(2014年5月21日)

 福井地裁が21日、大飯原発の運転を認めない判決を下したことについて、原告弁護団と原告団が次のように声明しました。紹介します。


 大飯原発3、4号機運転差止訴訟福井地裁判決を受けての弁護団声明

 福井地裁は、本日、関西電力に対し、大飯原発3、4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡しました。

 本判決は、福島第一原発事故後初めての運転差止訴訟判決になりますが、私たちは、司法が原発の抱える本質的な危険性を認めたものと評価しています。

 本判決は、おおむね、以下の理由から、大飯原発3、4号機の運転差止めを命じました。

 ① ストレステストの基準とされた1260ガルを超える地震も起こりうると判断した。地震は地下深くで起こる現象であるから、その発生の機序の分析は仮説や推測に依拠せざるを得ない、地震は太古の昔から存在するが、正確な記録は近時のものに限られ、頼るべき過去のデーターはきわめて限られていることを指摘した。

 ② 700ガルを超えて1260ガルに至らない地震について、被告はイベントツリーを策定してその対策をとれば安全としているが、イベントツリーによる対策が有効であることは論証されていない。とりわけ、地震によって複数の設備が同時にあるいは相前後して使えなくなったり故障したりすることは機械というものの性質上当然考えられることとした。

 ③ 従来と同様の手法によって策定された基準地震動では、これを超える地震動が発生する危険があるとし、とりわけ、4つの原発に5回にわたり想定した基準地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実を重視した。

 ④ 被告は安全余裕があり基準地震動を超えても重要な設備の安全は確保できるとしたが、判決は、基準を超えれば設備の安全は確保できないとした。

 ⑤ 地震における外部電源の喪失や主給水の遮断が、700ガルを超えない基準地震動以下の地震動によって生じ得ることに争いなく、これらの事態から過酷事故に至る危険性がある。

 ⑥ 使用済み核燃料は、福島原発事故において最も重大な被害をもたらすおそれがあるとされ原子炉格納容器ほどの堅牢な施設に囲われることなく保存されているため、危険である。

 これらの理由のうち、①から④と⑥は、大飯原発3、4号機のみならず、全国の原発すべてにあてはまるものであり、また、②のうち主給水の遮断が基準地震動以下の地震動によって生じ得ることについては、加圧水型の原発すべてにあてはまるものです。

 このように本判決は、大飯原発3、4号機に限らず、原発が抱える本質的な危険性を認めたと評価できます。

 原子力規制委員会の適合性審査の下、川内原発や高浜原発の再稼働が強行されようとしていますが、川内原発や高浜原発を含むすべての原発は、本判決が指摘する危険性を有しているため、再稼働することは認められません。

 また、関西電力は、大飯原発や高浜原発の基準地震動を2割から3割程度引き上げて耐震工事を行うことを明らかにしていますが、本判決は、現在行われている基準地震動の策定手法自体を否定しているのであり、このような場当たり的な対応によって、本判決が指摘する危険性を否定することはできません。

 これまで原発を容認してきたも同然であった司法は、市民感覚に沿って、福島第一原発事故とその被害の深刻な現実を目の当たりにして、「地震という自然の前における人間の能力の限界」を認める画期的な判断を下したものということができます。国、福井県、おおい町その他の原発立地自治体、関西電力その他の事業者も本判決を機に福島第一原発事故という現実を見つめ直し、原発推進・依存から脱却することを求めます。

        2014年(平成26年)5月21日

        大飯原発運転差止訴訟弁護団 団長 佐藤 辰弥





「頂門の一針」英断判決への声明

 5月21日、福井地方裁判所は、関西電力に対して、大飯3・4号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡した。

 同判決は、原発の「必要神話」や「安全神話」の理不尽な復活と「フクシマ」の意図的な風化に対する「頂門の一針」であり、司法の面目をほどこした英断である。また、世界一の原発密集地帯の福井県において、その地元裁判所によって言い渡された本判決の意義ははかりしれない。とくに、「本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」という本判決の指摘は、高い倫理性を表明していて感動的である。

 「フクシマ」がまざまざと実証しているように、未来世代にまで及ぶ「人格権」と「環境権」を侵害し、「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)や「生命・自由・幸福」(同13条)を奪い尽くす原発が本質的に違法的な存在であることを、わたしたち原告は公判で訴え続けてきた。

 さらに、累計50万人をこえた被曝労働者の存在、使用済み核燃料・「死の灰」の増加と後世代へのツケ回し、わが地震列島の動乱期にともなう「第二・第三のフクシマ」連発の可能性などを無視し、そもそも大電力消費圏による過疎地域への原発群の押し付けという差別的な構造を温存したまま、原発の再稼働や延命を容認することはもはや許されない。原発の海外輸出にたいする倫理的責任も問われている。

 ほとんど失われかけていた司法への信頼に大光明を点じた本判決に励まされ、喜びを分かち合いながら、「住民・地方自治と国民主権」(憲法の眼目)の本領を取り戻して、立法や行政に強力にはたらきかけるとともに、地元の原発関連の雇用や経済を転換し、真に安全安心な自然環境と生括が保証される「原発ゼロ社会」を、国内外の広範な市民と連帯しつつめざしていきたい。

         2014年5月21日

         「福井から原発を止める裁判の会」原告団

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原告団のみなさん! おめでとうございます。ご苦労様でした。本当にいい判決をかちとっていただいたことに、心から感謝します。関西電力は控訴するでしょうが、負けずに頑張っていきましょう。こちらでも住民訴訟がたたかわれています。わたしたちは、原発の再稼働に反対する世論をいっそう高め、政治的にも追い詰めることができるよう、がんばります。おめでとうございました。