■大阪府市のオスプレイ訓練受け入れについての嘉田知事のコメントは見過ごせない(2013年6月5日)


 松井一郎大阪府知事と橋下徹大阪市長が米海兵隊のMV22オスプレイの訓練を大阪府八尾市の八尾空港に受け入れると表明したことに、嘉田由紀子滋賀県知事は、「(八尾市は)人口密集地だし、地元がどう思うかを考えると軽々に口に出すべきではない」とのべたものの、「防衛は国の専権事項。残念ながら自治体の権限はないので、いやだと言っても(オスプレイが)飛んでくる」と述べたと報じられました。

 大阪府・市の首長が八尾市の頭越しに表明するなど、とんでもない話です。ましてや、それが世界で最も危険な軍用機、「未亡人製造機」とまでいわれているオスプレイの訓練受け入れなどと、絶対許せない話です。住民は、平和で、安心して暮らす権利を持っています。それを侵害するような人には、地方自治体の長となるような資格がありません。

 嘉田知事のコメントはどうでしょうか。これでは、沖縄の人たちをはじめ、オスプレイの飛行におびえる住民が、10万人を超えるような大集会に立ち上がっているのを、「いやだといっても飛んでくるよ」と、嘲笑したのではありませんか。

 日本共産党滋賀県委員会は、昨年10月にもオスプレイの岩国陸揚げ、沖縄配備の前に、知事として何か出来ることがあるのではないかと、嘉田知事に申し入れてきました。

 オスプレイとは何か。世界中で戦争の火を付け、まっさきに相手国に乗り込む殴りこみ部隊がアメリカ海兵隊。その部隊が装備する、垂直離着陸機です。

 このオスプレイは、普通のヘリコプターのようにプロペラに自動回転機能がない。故障の時に自力で墜落しては被害が大きい地域から脱出したり、乗り組んでいる隊員の脱出する時間もない。現に墜落事故も多発させ、乗員の死亡率も高いのです。そして日本の航空法は、オスプレイのような回転翼機の飛行を禁止しています。

 禁止されているはずの欠陥機が、なぜ頭の上を飛んでいるのか。日米軍事同盟を円滑に動かすために、日米間で設けられている日米合同委員会では、「人口密集地域上空を避け、可能な限り海上を飛行する」こと、危険な垂直離着陸モード、転換モードの飛行は「米軍施設、区域内に限る」と合意したとされています。

 しかし沖縄では住宅地上空での飛行が強行されています。オスプレイが陸揚げされた山口県でも、沖縄県でも、県知事、県議会、岩国市、市長、市議会が強く抗議し、全国知事会も「受け入れることはできない」と決議しました。沖縄では10万人のオスプレイ配備反対県民集会が開かれ、ここでも県をはじめすべての自治体がオスプレイの撤去をもとめています。

 しかし日本政府は「米軍の安保条約上の権利」だとし、米海兵隊は当然のようにオスプレイ配備を強行したのです。

 嘉田知事のコメントは、どれほど住民が危険にさらされ、要求が踏みにじられても、権限がないからしかたがないというに等しいではありませんか。全国知事会の緊急決議に、嘉田知事は、そんな権限はないから賛成しませんと言ったのでしょうか。

 そしてこれは滋賀県には関係ない話でしょうか。

 防衛省が公表した「MV22の普天間飛行場配備及び日本での運用に関する環境レビュー」では、日本全土に6つの米軍機低空飛行訓練ルート、つまりオスプレイ飛行訓練域を設定しています。その飛行ルートには、岐阜、和歌山を含めて21県138市町村があります。たしかにこのなかに滋賀は含まれていません。

 しかし高島市にある陸上自衛隊あいば野演習場で、ほぼ隔年で繰り返されている日米合同演習では、これまで米軍輸送機C-130が低空飛行し、米軍ヘリコプターの住宅地直上飛行などが繰り返されてきました。一昨年の日米共同訓練には、米海兵隊CH-46の参加が日米間で検討されたと報じられました。CH-46の後継機がオスプレイです。

 この問題で、嘉田知事は「防衛問題は国の専管事項」と、いわば傍観者の対応をしています。これでは嘉田知事の地方分権の主張とは、地方の願いをかなえるのではなく、国との役割分担に過ぎません。

 防衛問題には地方自治体は関与できない、というのは嘉田知事の持論です。しかしそこからは、全国の自治体と協力して、住民の安全と安心を守る立場には、いきつきません。