■大津自衛隊駐屯地の戦闘服「通勤」ってなんだ?(2013年1月19日)

Q 大津の自衛隊員が通勤時に「戦闘服」で通勤するようになったことがネットの話題になっています。どう考えているのですか? 私個人としては、市内が戦争モードというのは気持ちが悪いのですが、災害に即応するためにといわれれば、そうかとも思うのですが。ネットの世界では肯定意見、というか、何が問題なのかという声が多いようです。ネットの世界はかならずしも事実に即していない意見も多いので、どう考えているか教えてください。 (2013年1月10日、メールで寄せられたご意見から)

A 私たちは、通勤を「戦闘服」にした自衛隊大津駐屯地に、申し入れを要請していますが、駐屯地は「すでに市民には説明した。既に決定したことであり、本年1月から実施しているので、会う必要はない。電車などの通勤は戦闘服着用はしていない。自転車などで通勤する場合だけにしている」(同駐屯地広報室)という「返事」(?)だけで、駐屯地司令に申し入れたいという、私どもの重ねての申し入れにも、「司令は忙しい。要請に応じるかどうか日時を連絡する」という返事がありましたが、現在までその連絡はありません。

 戦闘服通勤については、多くの市民の方たちが反対を申し入れておられます。駐屯地として、明確な説明をするべきだと考えます。自衛隊が一方的な通告でじゅうぶんだと考えるのは不当です。

 ネット上の様々なご意見の中に、ニュースが流れたのが日本共産党の「しんぶん赤旗」だけだということから、戦闘服通勤が事実でないかのように発言されている方もおられますが、今年1月1日からの戦闘服通勤は事実です。

 問題の発端は、昨年12月18日付で陸上自衛隊大津駐屯地広報室長名の「自治会各位」あて「陸上自衛隊大津駐屯地の隊員の通勤時の服装の変更について(連絡)」という文書(左の写真)が届けられ、多くの自治会で回覧板で回覧されました。

 この文書では、「先般大津市においても発生しました突発的な集中豪雨災害等への対応を、より迅速に行うことができるようにするための方策の一つとして、通勤時の服装について戦闘服着用を原則とすることと致しました」としています。

 このような連絡は、自衛隊側が「市民へ知らせておかなければならない」と考えたためだと思いますが、それにしてはその後の自衛隊の対応は、まったく不誠実です。

 市民のみなさんは、「自衛隊員が制服姿で通勤することと、『戦闘服』姿で通勤することは、まったく性格が違う」「平和な町のなかを、非日常的な戦闘服姿で自衛隊員が歩くことは、市民感情を逆なでし、不安な思いをあおる行為」だとして、中止を求めるとともに、12月28日に説明会を開かれました(あくまで市民の方が主催して開かれたものです 写真下)。

 説明会には自治会長を含む約50人が参加され、「住民の合意と納得がないまま実施するな」と求められました。駐屯地の広報室長は、「災害派遣に迅速に対応するため」と説明しましたが、市民からは「国防軍とか集団的自衛権ということが言われているが、町の中に戦闘服を着た人がいれば不安を感じる」「緊急だからといって、消防隊員がいつも消防服を着ているのか」など、納得できないという意見が出されました。

 広報室長は「趣旨を理解してもらうしかありません」と繰り返しましたが、最後には「持ち帰って(上司に)報告します」とこたえました。こういえば、ふつうは、再検討の結果を市民に伝えますということと聞くものですが、その後はまったく何の連絡もないまま、1月1日から、戦闘服通勤が始まりました。

 説明会の中では、自衛隊の「災害救援活動などに感謝の気持ちを持っている」という人からも、「あまりにも急なやり方ではないか」という発言もありました。「反自衛隊の市民の、ためにする反対運動だ」と決め付ける、一部ネットの意見は、事実に沿わないものです。

 自衛隊は「なぜ戦闘服通勤なのか」などの基本的な質問にも答えられませんでした。実施時期まで半月足らず。自治会に回覧文書を届けたからといって、市民に知らせたとはいえません。自治会は、市民すべてが参加しているわけではないし、自衛隊の連絡を市民に知らせなければならない義務も負っていません。

 自衛隊は、「すでに決定し、実施している」ことだからと、中止要求拒否の「理由」にしていますが、「平穏に暮らす権利を脅かしている」と権利侵害を指摘されているのに、自分の「決定」や「実施」を盾にして、説明拒否をすることはできません。これは「市民無視の強行」というほかありません。

 もともと戦闘服通勤に合理的な理由はありません。

 「突発的な集中豪雨災害等への対応を、より迅速に行うことができるようにするための方策の一つ」といっても、そもそも災害への対応に、目立ちにくい戦闘服が適切かどうか、また、自宅や宿舎から直接災害救援に出動というのは考えにくいことです。災害出動に必要な装備や部隊の編成をしないでどうするというのでしょう。隊員は自宅に救援資材や装備を持っているとでもいうのでしょうか。

 だからこそ、何のために市内を戦闘服で行動するのか、それは異様だ、という市民の感覚と意見は当然だと思います。

 また迷彩の戦闘服は、危険です。大津駐屯地も、戦闘服で小銃など武器を携帯した市街地での徒歩訓練を、大津市内外の県内ほぼ全域、県境を超えて他府県にまで伸びたルートで実施しています(右写真、背後のビルは大津プリンスホテル)。

 このような訓練では、いきなり自衛隊員の異様な集団に出会って、びっくりした運転手が車の運転を誤り、はねられた隊員が亡くなるという事故が現に起きています。(2007年10月、高島市)

 自衛隊の施設外で訓練中に、武器を紛失した事故もあげることができます。これは、直接的に危険です。市街地訓練でも、ほんものの手榴弾や自動小銃、場合によっては、バズーカ砲、迫撃砲まで携行しているではありませんか。災害救助のための訓練などとは、とても言えません。

 市街地行進訓練では、武器を携帯していることを例示しましたが、さらに自衛隊は対空ミサイルのPAC3なども、施設外で運用しています。

 このようなことに、市民が嫌悪の感情を抱いたり、自衛隊の「戦争準備の訓練だ」と考えても不思議ではありません。また、そういう見方こそ、自衛隊のねらいを正確に指摘していると思います。

 わたしたちも、多くの市民のみなさんと同じように、施設外での戦闘服姿は異様であり、戦争の訓練を市街地で行うのは不当であり、市民生活にも大きな影響があると考えています。だいたい、自衛隊施設は「迷惑施設」であって、だからこそ地元自治体に基地周辺交付金を支出しているではありませんか。

 また、自治会を自衛隊の下請け組織のように広報の手段に使ったり、市民の声にまともに答えないやり方は、許されないと考えます。       (HP担当)