■長浜高福祉学科の廃止は許されません!(長浜民報ひきやま 2012年10月7日号から)

 県教委は1日、県立高等学校再編基本計画案と実施計画案を明らかにしました。計画案は、市民の 「高校の統廃合を止め、障害児学校を新設してほしい」という願いに全く応えるものではなく、長浜高校と長浜北高の統廃合(長浜高校校地に統合新校設置)ありきの内容で、重大な問題点を抱えています。
 また、計画案では今回、長浜高校福祉学科を廃止し(平成26年度から募集停止)、長浜高等養護学校を長浜北星高校校地に移転(平成28年度)するという内容が唐突に明らかにされています。
 学校関係者からは、学校現場の声を聴くこともなく、これまで実績のある福祉学科を高校統廃合で犠牲にするのかと怒りの声があがっています。

「県産教審答申」は長浜高校福祉学科廃止のための〝やらせ″

 今回の長浜高校福祉学科廃止の根拠とされたのが、県教委の諮問を受けた県産業教育審議会の答申(8月24日)です。現地調査もなく、学校現場の意見も聴かず、わずか3回の審議で県教育長に答申。
 答申が見直し理由として掲げた、①介護福祉士の国家試験の受験資格を得るために必要な学習時間の増加や「痰吸引等の医療的ケア」の問題については、学校現場では既に対応可能な教育課程を取り組んでいます。
 また、②普通教科とのバランスを欠き、人格形成やコミュニケーション能力の育成に問題があるかのような指摘については、これまでから福祉学科教育課程の福祉介護人材育成で、「人間尊厳、人権尊重、人間の自立」について深く考え、実際の施設現場で体験し、コミュニケーション能力はもとより、生徒の人格形成に大きな成果を上げており、答申の見直し理由は、全く道理がありません。
 今回の答申は、2年前に「介護福祉士養成校として、更なる充実を図ることがのぞまれます」としていたこととも正反対の内容となっており、県教委が、長浜北高校と長浜高校の統廃合のために、こんな〝やらせ〟の答申を利用して、大事な福祉学科を切り捨てようとしているとしか言えず、市民に受け入れられるわけは全くありません。

 
総合学科の福祉系列では、介護福祉士の受験資格なし

 県立高等学校実施計画案では、長浜高校の福祉学科を廃止し、長浜北星高校に福祉系列を新たに設置するとされています。しかし、福祉系列では福祉に関する基礎的な学習を行うのみで、介護福祉士の受験資格は得られません。
 長浜市の高齢化が進展する中、介護福祉士などの人材養成の必要性はますます増大しています。
 長浜高校福祉学科の廃止は地域のニーズに相反する重大な後退です。


介護福祉士国家試験合格率は高い実績!

く介護福祉士国家試験合格率〉
            平成23年度      平成14年度~平成23年度
全国            63.9%         50.3%
長浜高福祉学科    100 %          83.2%

 長浜高校福祉学科の前年実績では、介護福祉士の国家資格試験に受験者37人全員が合格しています。全国と比べても極めて優秀です。


く県の介護福祉士養成校〉
学校名                  定員
びわこ学院大学(私学)         60
華頂社会福祉専門学校(私学)    40
綾羽高等学校(私学)          40
長浜高校福祉学科(公立)       40
※養成定員計180人、高齢者人口比で全国41位

 県教委はこの実績ある福祉学科をなくそうとしています。地域から『長浜高校福祉学科を守れ』の声を大きく広げましょう。

長浜高と長浜北高の統廃合ありきの計画案

 
長浜と彦根の2校統廃合を堅持

 滋賀県教委10月1日、臨時教育委員会を開き、県立高校の再編計画案を発表しました。県民の強い批判を浴びて「1年以上先送り」にせざるをえなかった昨年の再編計画原案と比べて、統廃合実施を2年先送り(2016年実施) にしたことや北星定時制課程廃止の撤回などの改善部分も見られますが、長浜市(長浜高と長浜北高)と彦根市(西高と翔陽高)の統廃合は一歩も譲らず堅持しています。

 
すべてが2校統廃合のためか

 原案にあった北星高校にまちづくり系列設置案は何の説明もなくひっこめ、福祉系列を設置するとしました。この一事をもってしても、県の計画案の理念のなさと、高校教育予算削減のための長浜2校の統廃合が最優先の姿勢が読み取れます。

 
ここが問題!

 
①なぜ長浜2校の統廃合か

 計画案では、長浜の2校を統合した新校は、「大学等への進学指導に重点を置く普通科単独校」「新しい英語教育のモデル校」「5年を目途に中高一貫教育校」としています。しかし、これらのことは新校を設置しなくても現在の高校でできることです。
「長浜市、彦根市の中規模校のみが統合対象とされるのは全く理解ができません…長浜北高の老朽化に伴う建替えが財政的に困難であるためとしか考えられません」(昨年7月に長浜市が県に提出した公開質問状)という疑問は残ったままです。

 
②長浜農業高校の学科削減

 計画案は、「農業学科の小学科をわかりやすい体系に名称変更」するとして、長浜農業高校の4学科を農業科、食品科、園芸科の3科(1学年3学級)にするとしています。長浜農高では、「全国初のガーデン科をはじめ、4学科10類型で地域に開かれた魅力ある内容で農業教育の展開」(農高ホームページ)を図り、成果をあげてきました。これをご破算にするのは、「魅力と活力ある高校づくり」に逆行しているのではないでしょうか。

 
③長浜高校福祉学科の廃止

 長浜高校福祉学科の廃止は、原案よりも改悪された部分です。関係者からも強い批判の声が出されています。

土壇場で腰砕けの長浜市長

 長浜市長の「KBセーレンの遊休地に統合新校を」というこの時期の提案は、「湖岸は液状化が問題」と県に一蹴され、「(長浜市が)統合にご理解を示してくださったと受け止めさせていただいております」と県教育長を喜ばせ、長浜2校統廃合の後押しとなっただけでした。市長は今回の計画案を「一定評価したい」と言わざるを得ませんでした。
 長浜2校の統廃合や長浜農高の学科削減に問題ありとして、県に原案の白紙撤回を迫り、公開質問状を出し、「長浜の未来を拓く検討委員会」を設置し、市民本位に高校問題に取り組むとしてきた長浜市長の土壇場での腰砕けに、多くの市民が幻滅しています。市長は原点に立ち返るべきです。

 
世論を高め計画案の撤回・変更を

 県教委は今後、計画案の説明会など県民の意見を聞き、それをふまえて計画策定をするとしています。高校再編計画案の問題点を広く明らかにし、世論の力で計画案の撤回・変更を迫っていくことが求められています。