■(資料)県立高校の統廃合を考える会の知事と県教育長への申し入れ(2012年10月2日)
 滋賀県教育委員会が1日の臨時教育委員会で決めた県立高再編計画の修正案と実施計画案について、県立高校の統廃合を考える会は2日に知事と教育長あてに申し入れた申し入れ書の全文です。(表記を一部変更しています)

滋賀県知事          嘉田由紀子様
滋賀県教育委員会教育長 河原 恵 様

      県立高校再編計画案に関する申し入れ

 昨日(10月1日)、臨時教育委員会は「滋賀県立高等学校再編基本計画案」と「同実施計画案)を決定しました。これは、昨年7月11日に示された「再編原案」に一定の修正を加えたもので、次のような特徴を持っています。

 第1に、自らが示した学校の適正規模(1学年6~8学級)を無視してまで、統廃合計画原案の根幹部分の実施に固執し、今後の本格的な統廃合計画に道を開いていることです。

 長浜北高校を廃校にし1学級8学級の学校として長浜高校と統合するとしていますが、1学年8学級は「適正規模」の上限です。また、この統合された新校は「大学進学を重点に置く普通科単独校」として長浜高校の教育の1つの柱である福祉学科を廃止します。また、長浜高校の敷地内にある高等養護学校を長浜北星高校に移転します。統廃合のためなら他を犠牲にしても構わないという極めて非教育的な姿勢です。

 彦根西高校を廃校にし、1学年9学級として彦根翔陽高校と統合するとしています。これは、適正規模の上限すら突破しています。少人数授業で多くの講座を開設する総合学科を9学級規模で運営することは、不可能に近いといえます。

 ここには、あちこちで批判され破綻している「大規模校でこそ切磋琢磨できる」という、何の根拠もない幻想があります。また、今後、本格的で大幅な統廃合をすすめる「構え」が見え隠れします。実施計画には「必要に応じて次期以降の実施計画を策定します」とあります。

 「湖東通学区」は、現在でも普通学科の割合が51.5%(全県70.0%)と相当に低くなっています。彦根西高校の普通学科がなくなり、能登川高校が総合単位制に改編されることで、「湖東通学区」の「普通」の普通学科の募集定員がさらに大幅に減少します。これが、県民のニーズに応えたものなのかどうか、再検討する必要があります。

 第2に、1つ1つ積み上げてきた教育上の成果や教育体制を顧みずに、いとも簡単にひっくり返していることです。これまで、長浜高校の福祉学科では、教職員の相当の努力もあり生徒全員が介護福祉士の国家免許を取得するなど、全国的にも希な教育効果を上げています。この学科の廃止は、再編の基本理念である「生徒のニーズに応える魅力ある学校づくり」からも外れた行為です。3年間の実践を終えて、県内外で注目され、県教育委員会も評価する彦根西高校の「学びの共同体」のとりくみと教育体制が、新たな学校で立ち消えになることは目に見えています。教職員の意欲的で創造的なとりくみを事実上、切り捨てる県教育委員会と県行政の姿勢に教育的な道理はありません。

 総合単位制の新能登川高校については、大阪で破綻している午後部の設定や併修、教職員の共同や職員会議の設定をどう保障するのか、教職員定数の不足など、基本的な疑問が山積しています。この疑問に答えずに、無理矢理突っ走るのは正しくありません。

 第3に、一部を除き、これまで県民から出されてきた疑問や意見を顧みず、統廃合ありきで突っ走っていることです。 ○ここ10年間程度子どもの数は減らない。 ○統廃合によって高校生一人に使う県のお金は全国最下位になる。 ○大規模校でこそ教育効果が上がる根拠はどこにあるのかなど、統廃合の根拠への重大な疑問や意見に、真撃に向き合うことなく出された案です。

 第4に、それにもかかわらず、いくつかの点では地域住民・県民の声が届き反映しています。分校化が確実視されていた信楽高校は本校として存続するようになりました。長浜北星高校の定時制は総合学科として、彦根工業高校の定時制は現在のまま存続します。

 昨日の教育委員会の最後に、小倉明浩委員(委員長代理)は「昨年度の案もベストの案として示したが反省することもあった。今回もあくまで案、オープンにして県民の意見・評価を聞いてほしい」と述べました。これは、県教委事務局が示す案が県民の討論に耐えられないことを示しています。その根本には、今回の高校再編計画の動きが、教育の道理に沿っていないことがあります。私たちは、県教委と知事に、教育の道理に立って次のこと実施するように要求します。

 ○長浜北高校や彦根西高校の廃校など再編案の中心である統廃合部分を撤回し、学校の適正規模の見直しや35人学級なども視野に入れて、再編計画全体を見直すこと。新能登川高校の総合単位制についても開かれた討論をすすめること。

 ○県民から提起されている疑問や意見に真筆に応えること。私たちの公開質問状に文書で答えること。

 ○県民説明会を上からの説明ではなく、県民討論会に組み替えて実施すること。

   2012年10月2日                県立高校の統廃合を考える会