■県民の不安にこたえなかった原子力防災計画の見直し(2012年2月8日)



 「県地域防災計画(原子力災害編)」の見直しを検討していた県の検討委員会(委員長・林春男京大防災研究所教授)は3日、県の「県地域防災計画の見直し(案)について」素案を、一部修正して承認しました。福島原発事故の原因も、安全対策も明らかでないまま、国が定期点検などで休止中の原発の再稼働に動いていることが緊急の大問題となっている中で、素案は原発からの撤退という根本問題には踏み込まず、防災対策としても福井原発4基の事故を想定し、最悪の事態への対応とはなりませんでした。

 素案は、これまで県内には原発事故の影響はほとんどないとしてきた県地域防災計画(原子力災害編)を、福島原発事故を受けて、同事故と同程度の放射能の放出を前提に見直しました。

 この結果、「放射性プルーム通過時被曝を受ける地域がおおむね県全域におよぶ可能性がある」とし、「原子力安全委員会のUPZ(緊急時防護措置を実施すべき区域)を踏まえ、県の自然・社会的周辺状況を総合的に判断」した「防災対策を重点的に充実すべき地域」を最大で43㌔まで拡大したものの、地域の指定は高島市と長浜市の一部という、きわめて限定的なものとなりました。

 福島原発事故の教訓を十分に生かしてものとはいえず、県民への原発事故情報を知らせる方法も、避難・退避計画の具体的な検討は県防災会議や市町防災計画に先送りされたほか、近畿1400万人の命の水源・びわ湖の汚染防止にも踏み込んだものとはいえません。

 検討の中では、福島原発の事故原因や国の安全基準、避難のさいの住民合意、避難指示の根拠などで疑問も出されましたが、国の防災指針が出ればそれとの整合性を図ることとされるなど、「福島原発事故以来、全国初」という打ち出しとは裏腹に、国の動向に従属するものとなったことも大きな問題です。放射性物質の監視は、キセノンとヨウ素だけで、国の基準に含まれるクリプトンやセシウムについては見送られ、今後の課題とされました。

 コンクリート壁建物がない地域での退避はどうするか、ヨウ素剤の備蓄と使用の対策も、市町の防災計画に押しやりました。防災計画を説明する県主催「原子力防災フォーラム」も、当面、高島市と長浜市だけの開催とされ、県民や市町の不安を解消する点でも不十分さはぬぐえません。

 検討委員会にたいし、知事は「住民の不安があり、命の水源びわ湖を預かる県としてしっかり計画を見直す」と話し、避難方法、モニタリングポスト整備、情報伝達の検討を求めました。このなかには原発の是非を問うことが欠けていました。また検討委員会も、「福井原発で放射能が漏れることはない」「びわ湖の1%が放射能で汚染されても、水割りなら味もしない」などの暴言が相次いでも問題とされなかったように、検討委員会は原発「安全神話」にとらわれていました。

 日本共産党は、福島原発事故の直後から、知事に「原子力依存そのものを根本的に見直すべきだ」と申し入れ、最悪の事態を想定した避難計画など、県地域防災計画の「全面見直し」を求め、検討委員会での問題発言も指摘して、「原発の危険性を指摘してきた学者、研究者も委員に」と求めてきました。

 滋賀県に隣接する福井県は、世界一の原発密集地帯となっているほか、40年を越す老朽化原発など、日本でもっとも危険な原発地帯です。

 日本共産党は、科学者、技術者の英知を集め、県民や市町自治体の声にこたえる県防災計画に強化し、避難対策を具体化するよう求めます。同時に、県民の安全を守る最大の保障は、期限を切った原発の撤退、原発のない日本であり、原発からの撤退をめざし奮闘するものです。               以上