■経産省に原発政策の転換を申し入れ(2011年11月22日)

近畿各府県の日本共産党は経済産業省に、福井県の原発から撤退し、原発政策の抜本的転換を要求しました。


経済産業省
経済産業大臣 枝野幸男 殿
                                      2011年11月22日
                             日本共産党国会議員団近畿ブロック事務所
                                  京都府委員会
                                   大阪府委員会
                                   兵庫県委員会
                                   滋賀県委員会
                                   奈良県委員会
                                   和歌山県委員会
                                   福井県委員会

世界一の集中立地点・福井県の原発群からの撤退、原子力行政の抜本的転換を求める要望書

 東京電力福島第一原子力発電所事故は、原発事故の危険、現在の原発技術が本質的に未完成で危険であることを明らかにした。中でも福井県若狭湾沿岸の原発群には特別の危険があり、住民の不安と安全への願いは切実である。

 福井県には日本の原発の4分の1、15基(うち商業用13基)が立地し、処理技術の目途がない使用済み核燃料は9000体以上が保管されている、世界一の集中立地点である。福井原発群の事故・故障は、法律・通達の対象となる主なものだけで440件(原子力安全基盤機構まとめ)に及び、過半数の8基が運転開始後30年以上、うち2基は40年以上の危険な老朽原発である。高速増殖炉「もんじゅ」をはじめ、危険な核燃料サイクル計画の実験場にもされている。

 日本列島のどこにも、大地震と大津波の危険のない「安全な土地」と呼べる場所は存在しないが、若狭湾沿岸は「活断層の巣」であり、3基が活断層から1キロ以内にある。地震専門家から「浜岡原発に次いで危険」(石橋克彦神戸大名誉教授、5月23日参院行政監視委の参考人質疑)と指摘されている。世界中にこのような所はない。さらに天正大地震(1586年)により若狭湾沿岸で津波による被害があったことが歴史文献に記録されているが、関西電力は当初、信用できないとして調査要求に応じなかった。

 京都、大阪などの大都市は100キロ圏内にあり、近畿1400万人の「命の水源」琵琶湖からは30㌔、琵琶湖集水域の福井・滋賀県境からは13㌔しかない。重大事故が起これば被害の甚大さははかり知れず、福井原発で重大事故は絶対に起こしてはならない。

 以上から近畿各府県、福井県の住民の命と安全を守るため、福井原発のすみやかな撤退と原子力防災の抜本的な強化、原発に依存したエネルギー政策の転換を求め、下記の諸点を要望する。

             記

一、原発の再稼働反対、すみやかな撤退、原発縮小を求める

 政府が「原発からすみやかな撤退」を決断し、原発ゼロの期限を切った行動計画を策定することを求めるとともに、以下要望する。

 (1)福井原発の再稼働を認めないこと

  ①関西電力は、定期検査で停止中の大飯原発3号機の再稼働に向け、ストレス・テストの結果を経産省原子力・安全保安院に提出したが、「やらせ」の保安院が規制機関として失格であることは明らかである。野田首相は、福島原発事故の原因究明が「すべてのスタートの大前提」とわが党の志位和夫委員長に答弁した(9月27日、衆院予算委)。「事故原因の究明なし」、「まともな規制機関なし」の再稼働など論外である。また福井県は下記のような問題を提起しており、地元合意も得られていない。大飯3号機をはじめ、停止中の福井原発の再稼働は認めないこと。

  ②福井県が指摘している問題(福島第一原発の地震による損傷、高経年化の影響、浜岡原発以外は安全とする根拠)、暫定基準を求めている点について国の考え方を示されたい。

 (2)特に危険な原発は停止・廃止せよ

  ①プルサーマルは中止し、プルトニウム循環方式からただちに撤退を
 関西電力高浜原発3号機ではプルサーマル運転が行われ、同4号機でも実施が予定されている(福島原発事故により延期)。プルサーマルは発がん性が強いプルトニウムを原料とするなど危険であり、中止されたい。プルトニウム循環方式からただちに撤退されたい。

  ②老朽原発の運転認めず廃炉に 

 関電は7月、美浜原発1号機に続いて同2号機の40年以上運転認可を経産省原子力安全・保安院に申請した。国は来夏までに判断するとしているが、利益第一で老朽原発を酷使する危険な40年以上運転は許可しないこと。30年を超える危険な老朽原発は廃炉にすること。

  ③活断層上の原発は停止・廃止に

 地震研究が進み、全国の原発立地地域で新たな活断層が次つぎ見つかっている。敦賀原発では真下に伸びる断層が活断層の影響で動く可能性があることが分かったが、電力3事業者は「これまでの評価に影響を与えるものではない」と国に報告している。しかし福井原発の耐震安全性への危惧は強く、国内の原発の耐震安全性審議のとりまとめ役だった纐纈一起・東大地震研究所教授は「中でも敦賀原発(敦賀市)ともんじゅ(同)は一番に止めた方がいい」(「毎日」福井版9月13日付)とのべている。若狭湾の活断層上の原発の停止・廃止を求める。

 (3)原発、原子力施設の新増設は認めないこと

 野田首相は原発の新増設について、「建設が相当進んでいるものもあるので、案件ごとに個々に判断していく」(10月17日、内閣記者会インタビュー)と当初の「新増設は困難」との立場から後退している。しかし原子力安全委員会が9月に集計した原子力発電に関する国民の意見では、「推進または現状維持」は1.5%にすぎないなど、国民の多数は新増設に反対である。以下要望する。

  ① 国は敦賀3,4号機の増設計画を撤回し、増設申請は認めないこと。

  ② 和歌山県など近畿における原発の新増設は認めないこと。

  ③ 使用済み核燃料プールの増強は認めないこと。

 (4)関西電力など電力事業者に「事故時運転操作手順書」の公開を求め、専門家による検証を行うこと

 福島第1原発の「事故時運転操作手順書」の一部が公開されたが、東京電力は長時間の全電源喪失を想定していなかったことが明らかになった。他の電力事業者の「手順書」にも同様の欠陥があると考えられる。標記の事項を要望する。

二、原子力地域防災について

 (1)原子力防災計画の範囲などについて

 原子力安全委員会の作業部会は「原子力発電所に係わる防災対策を重点的に充実すべき地域に関する考え方」で、原発防災区域を原発から半径30キロとするなどの見直しを決めた。しかし、福島原発事故では放射性物質が外部に放出されると、被害はどこまでも広がる危険があることが明らかになった。「計画的避難区域」となっている福島県飯舘村の大半は福島第一原発の30キロ圏外である。

  ① 原発からの「同心円外」を対策から除外することは許されない。汚染や被害の実態に即した対策を行うこと。

  ② 府県が「安全委」が示した防災域を拡大する場合、国はこれを支援すること。最大の原発集中県である福井県、隣接する京都府、滋賀県などは府県全域を原子力防災計画の範囲となるような国としての指針を示すこと。

  ③ 「財源的裏付けは未定で、実効性のある計画になるかは不透明」(「毎日」10月20日夕刊)、「関係自治体の視点に立った現実的な議論と財政支援が不可欠で、国はきめ細かな対応が求められる」(「読売」10月20日夕刊)と指摘されている。国は万全の財政措置をとること。

  ④ 福井県において県民と通勤・通学・観光客に見合うヨウ素剤を自治体庁舎、学校・公民館など避難施設に重複配備すること。防災区域内の自治体でも同様の措置をとること。

 (2)原発事業者に隣接の府県との安全協定締結を指導すること

 福井県に隣接する京都府や滋賀県、同府県内の自治体から立地県並みの安全協定の締結が求められている。国として電力事業者にこれらの自治体との安全協定締結を指導されたい。

三、節電要請について

 政府と関西電力は、電力の供給不足の恐れがあるとして今冬、10%以上の節電を要請したが、節電をすすめるに当たっては以下の点を求める。

  ①「省エネ」などの観点からも節電自体は大切なことであるが、利用者に協力を求める際には、正確で必要なデータを示し、その根拠を明らかにして理解と協力を得ること。

  ②大口需要者の節電こそ必要であり、一般家庭に過度な節電を無理強いしないこと。

  ③「電力不足」を意図的にあおらず、節電を原発推進に利用しないこと。

四、再生可能エネルギーの普及について

 再生可能エネルギーをエネルギー政策の基幹にすえることを求め、以下要望する。

 ①国の太陽光発電システム補助制度の補助金、補助枠を大幅に拡充すること。

 ②再生エネルギー潜在力調査など、地方自治体が行う再生エネルギー普及のための調査・研究を国が支援すること。


環境省
環境大臣 細野豪志 殿

一、放射能汚染から国民と子どもの健康を守る取り組みについて

 放射能汚染から国民と子どもの健康を守る緊急法整備、食品の暫定規制値を守ることはもちろん、実効線量、飲食物摂取に関する指標などを国民の立場に立って抜本的に見直すことが求められている。あわせて近畿、福井にかかわって以下要望する。

 (1)琵琶湖汚染について

 琵琶湖は福井原発で重大事故が起きた場合、北部が汚染される危険が滋賀県の予測結果からも明らかになっている。放射性物質による琵琶湖汚染は、近畿1400万人の命と健康に重大な影響を及ぼす。電力事業者と国は、このような事態を絶対に起こさないことはもちろん、万一の重大事故の対策に全面的な責任を負うべきである。

  ①琵琶湖北部は美浜原発から30キロ圏にあり、UPZ(緊急時防護措置準備区域)の対象となる。琵琶湖汚染の危険をどう認識しているか、また現時点で検討されている汚染対策を明らかにされたい。対策は、琵琶湖汚染を視野に入れた抜本的なものとされたい。

  ②琵琶湖の水質を常時監視する体制を構築されたい。

 (2)被災地のがれき(災害廃棄物)広域処理について

 国は「東日本大震災により生じた災害廃棄物の受け入れ検討情況調査」を地方自治体に求めているが、市町村は住民や議会に説明する時間もなく、3択式のアンケートが「受け入れ困難」の意思表示ができない書式になっていることなど問題が多い。

 そもそも放射能汚染された廃棄物の処分は、電力事業者と国が責任を負うべきである。放射能による健康被害には「これ以下の被ばく量なら安全」という「しきい値」は存在しない。国は「8000ベクレル以下は一般の廃棄物と見なして埋め立て処分が可能」としているが、住民は「放射能汚染を拡散するのではないか」という不安を持っており、自治体は住民を説得できる明確な根拠を持てず、「国の一方的な押しつけ」という声までが上がっている。

  ①災害廃棄物処理を口実に、最終処分場の処理基準を緩和し、高汚染の廃棄物まで一般廃棄物として地方自治体に処理を押し付けることは絶対にしないこと。

  ②住民への説明、合意・納得なしに被災地のがれき(災害廃棄物)を搬入しないこと。

 (3)放射能調査について

 地方自治体や住民などが自主的に放射能調査を行っている。国はこうした取り組みを支援し、検査機器の貸し出し要請に応えること。

二、再生可能エネルギーの普及について

 再生可能エネルギーをエネルギー政策の基幹にすえることを求め、以下要望する。

 ・再生エネルギー潜在力調査など、地方自治体が行う再生エネルギー普及のための調査・研究を国が支援すること。


文部科学省
文部科学大臣 中川正春 殿

一、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を 

 「もんじゅ」はトラブルが相次ぎ、停止中も1日4000万円の維持管理費がかかるなどすでに1兆円近くが投じられている。「もんじゅ」への批判も厳しさを増している。気の遠くなる税金のムダづかいをただちにやめ、危険な「もんじゅ」廃炉を決断すること。

二、放射能汚染から国民と子どもの健康を守る取り組みについて

 放射能汚染から国民と子どもの健康を守る緊急法整備、暫定基準値を守らせることはもちろん、実効線量、飲食物摂取に関する指標など国民の立場に立って抜本的に見直すことが求められている。あわせて近畿、福井にかかわって以下要望する。

  (1)琵琶湖汚染について

 琵琶湖は福井原発で重大事故が起きた場合、北部が汚染される危険が滋賀県の予測結果からも明らかになっている。放射性物質による琵琶湖汚染は、近畿1400万人の命と健康に重大な影響を及ぼす。電力事業者と国は、このような事態を絶対に起こさないことはもちろん、万一の重大事故の対策に全面的な責任を負うべきである。

  ①琵琶湖の水質を常時監視する体制を構築すること。

  ②モニタリングポストの計器を非常時に対応できるものにし、面的監視網の穴がないよう増設すること。その際、電力事業者にも負担を求めること。

 文部科学省は全国にモニタリングポスト設置の対応をしたが、その測定性能はγ線の10マイクロシーベルト以下の低線量域のものであり、高線量が問題になる非常時には役立たない。滋賀県は文部科学省配置のポスト8基を県内の陸域配置を計画しているが、琵琶湖での線量測定には手が届いていない。県議会でも、琵琶湖の竹生島など湖上設置を求める声が上がっている。ポスト設置箇所や箇所数は各県の実情に応じ、面的監視網に穴がないよう増設するとともに、電力事業者に負担を求めるべきである。

 (2)食品の安全確保について 

 「流通しているものは安全」と片付けず、学校給食の食材の検査体制の確立、食材の検査機器購入に国が助成すること。

(3)放射能調査について

 地方自治体や住民などが自主的に放射能調査を行っている。国はこうした取り組みを支援し、検査機器の貸し出し要請に応えること。

三、原子力地域防災について

 ①自治体の防災計画策定などのため、SPEEDIのデータを自治体の求めに応じて情報提供すること。

 滋賀県が独自に行った試算で、福島並みの事故が福井で起きた場合、100㍉シーベルト以上の汚染が湖北地域、高島市、長浜市に及ぶことが示された。このシミュレーションは、県が県防災計画原子力災害編の見直しのために設置した検討委員会での要望で、SPEEDIの利用を求めたが「断られた」(県の担当者)ため、精度や核種に制限のある県の大気シミュレーションモデルによって行われた。

 ②新たな防災区域の設定にあたり、予測的手法から実際の計測に基づく判断に重点が移されたが、SPEEDIの活用が後景に追いやられてはならない。 福井県庁にあるシステムは10㌔圏の狭域しか予測できない問題があり、50㌔など広域の予測ができるものに充実すること。
                                                            以上