■滋賀県に原発政策の見直しを申し入れ(2011年6月6日 共産党滋賀HP)

 日本共産党滋賀県委員会は、嘉田知事あてに県の原発政策の見直しを求める要望書を提出しました。


滋賀県知事 嘉田 由紀子 様


県民の安全と生命、環境を守るために、原発政策の見直しを求める要望書

                              2011年6月6日  日本共産党滋賀県委員会

 福島第一原発災害は、今日に至るも、その収拾の見通しが立たないばかりか、さらに深刻な事態が起こりうる可能性も否定できない状況のまま推移している。このなかで、国民の不安は高まるばかりである。そして、原発に依拠してきたエネルギー政策の根本的転換を求める声が強まっている。このことは、「原発銀座」といわれる福井県の隣接県である滋賀県民にとっても同様である。

 とくに、福島原発事故以来、すべての電力会社が国の指導を受けて、原子力発電所の安全対策を強めているなかで、日本原子力発電の発表で、5月2日に敦賀2号機で放射能漏れ事故を起こした。その原因は、1987年の運転開始以来、配管の点検・交換を一切していなかったことが原因であったことが明らかにされている。まさに福井県の原発の総点検は急務であることを、この事例は示している。

 滋賀県民の安全・安心および、近畿1400万人の命の水源を守るためにも、滋賀県は次のことを行うべきであると考え要望書を提出する。

 第一に、滋賀県民が、原発災害から免れる根本的対策は、原発からの撤退以外にないことを明確にし、国等に申し入れること。

 今の原発技術は、本質的に未完成で危険であることは明白である。一旦、大量の放射性物質が放出されれば、被曝による人体への影響には、安全閾値がなく、空間的にもどこまでも広がり、時間的にも将来にわたって危険を及ぼす可能性があり、地域社会全体の存在をも危うくするものであることが明確になっている。

 原発の危険から、滋賀県民の安心・安全を真に守るためには、国が原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムを策定することと、推進機関から完全に分離・独立した原子力の規制機関をつくるよう、国に強く申し入れること。

 第二に、今回の福島原発災害は、「安全神話」にどっぷりとつかって、対策を行ってこなかった歴代政府と電力会社の無策を浮き彫りにした。原発がゼロになるまでの間は、「日本の原発では重大事故は起こらない」とする「安全神話」と決別し、最悪の事態に備えた対応を、滋賀県地域防災計画(原子力災害対策編)の基本に据えること。

 県は、これまでの不十分な原子力災害対策編であったとはいえ、そのなかで安全確認のための立ち入り調査もうたっていた。しかし、現実には検討委員会でも指摘されたように、福井県での原子力災害訓練や検討に参加したことはなく、情報収集にとどまっていた。検討委員会の結論を待つまでもなく、安全対策の緊急総点検を求めるための努力をすべきである。県自身も、原発「安全神話」からの脱却が求められている。

 今日でも、「安全神話」は新たな形で再生産されている。

 浜岡原発の停止は正しい措置だが、一方で、その他の原発については安全であるとするものになっている。5月
19日に開かれた第1回滋賀県地域防災計画の見直しにかかる検討委員会でも、「福島第一原発事故は沸騰水型であったから起こったので、加圧水型の福井原発では起こらないと考えてよい」との驚くべき発言があり、委員長も「専門家から福井県では最悪がないと太鼓判をおしてもらった」と応じたが、これらもその一例である。

 第三に、原発ゼロに至るまでにも、滋賀県として、福井県にある原発の問題点について、しっかりとした対応を政府および電力会社等に求めること。

1、これ以上の新増設をするべきではないとの立場から、日本原電敦賀発電所の3号、4号機の建設中止を求めること。

2、老朽化した原発の運転を段階的に中止すること。福井県には、老朽化した原発が8基も存在している。なかでも日本原電敦賀発電所1号機、関西電力美浜発電所1号機は、いずれも建設年が1970年の超老朽炉で、即時中止すること。また、それ以外の老朽炉も順次、計画的に廃炉にすること。

3、世界が撤退した技術である、高速増殖炉「もんじゅ」の相次ぐ事故を直視し、即時中止を求めること。

4、プルトニウム循環サイクルから撤退するためにも、高浜発電所3号機の稼働をやめること。

5、運転中止中の原発については、新しい「安全基準」による総点検を行い、かつ関係住民の同意がない限り運転再開を行わないこと。

6、福井県の原子力発電所の総点検を行うこと。その際、津波対策、原発耐震安全性の根本的見直しをすること。

 第四に、滋賀県地域防災計画(原子力災害対策編)の見直しについては、先にも述べたとおり、最悪の事態を想定したものとすることを前提に、次の諸点を取り入れること。

 検討委員会では、露骨な原発「安全神話」が披瀝されていたが、検討委員会に今まで、原発問題で批判的立場をとっていた人も積極的に呼び、そうした人々の意見を十分反映するようにすること。>

 琵琶湖に対する対応を万全のものとすること。第1回検討委員会で、委員長が「30キロ圏内なら、琵琶湖は1%しかかからない」としていたが問題である。アメリカの原子力規制委員会は、80キロ圏内まで水源地・食料についての対策をとらなければならない地域としている。80キロ圏であれば敦賀原発からの距離で琵琶湖は完全に入る。実際、今回の福島原発では、東京都の浄水場について、一時、乳児の飲料水に適さないことが発表されたが、これはアメリカ原子力規制委員会の想定もはるかに超えたものになっていることからも明確である。

 琵琶湖の放射能汚染対策は、困難が予想されるので、事故の可能性を過小に見積もるのではなく、過酷事故を想定して、専門家の意見を求めるべきである。

 滋賀県内を年間50~60回通過するといわれる核燃料等の輸送についての対応策を、現場の消防関係者の意見も含めて明確にすること。

 モニタリングポストは、モニタリングカーを2台にしても、置き換えができない定位置での観測という重要な意味をもっており、モニタリングポストの復活拡充は不可欠である。その際に、立地県のように、事業者・国が財政的裏打ちをするよう、国等に求めるのは当然だが、それが実現するまでは、県民の安全を守るためにも、従来同様の独自の措置をとることは当然である。

                                            以上